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2007年10月16日 (火)

池波正太郎著『映画を見ると得をする』―抜書き―

映画を見ると灰汁ぬけてくる、と池波正太郎氏は言っているが、ちょっと横道にそれて次のような事も書いている。

 これは直接映画には関係ないことだけど、「身銭を切る」という習慣を若い人はことに身につけなくてはいけない。勤め人は会社の金で一応のことを全部やる。しかし、それでけでは人間は成長しないんだよ。身銭を切って初めてその人間のスケールが大きくなって行く、知らず知らずのうちに。
 たとえばタクシーに乗って九百円のところを千円出して、運転手がおつりを出す前に、
「あ、いいですよ」
と、いってごらんなさい。まあ、運転手によるけどね。感じのよい運転手だったらの話だ。これを繰り返して三年ぐらいたつうちにその人のスケールが全然違ってきちゃう.不思議なんだよ、これは。どういうことかというと、車に乗って運転手がお客のために親切にやってくれる、それがわかるからお客も気分がいいわけでしょう。その気分のよさを運転手に伝えるのが、つまり百円なり二百円なりのチップですよ。
「どうも、ありがとう」
と、いうだけでは、やっぱり伝わらない。人間の気持ちというのは、かたちに表わさなくては、なかなか伝わって行かないものなんですよ。一方、もらった運転手はね、
(自分がお客に親切にすれば、お客さんもわかってくれるんだな……)
と思う。そうすると非常に気分がいい。その次にいやな客が来ても我慢ができる。運転のしかたもまた違ってくる。結局、チップという身銭を切った人は、知らないうちに世の中に対してうるおいをあたえることになるわけです。
 何かにつけて身銭を切ることを覚えると、三年たてば本当に人間の大きさが違ってくる。それは神経の回りかたが違ってくるからですよ。全部それが仕事に影響してくる。神経の回りかたというのは一つですからね。

うーん、粋だねえ!

Book 映画を見ると得をする (新潮文庫)

著者:池波 正太郎
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